Testing Ground

ラックスマン D-07X 試聴:物理的メディアとデータの両方を楽しめるデジタル・オーディオ・プラットフォーム

日本の音響機器メーカー ラックスマンは、DAC機能を搭載したCDプレーヤーを開発し続けている。D-07Xは、CDとSACDそしてMQAフォーマットも再生できるハイエンドオーディオ機器。デジタル入力を備えているため、ストリーミング機器の音声を変換することも可能。この2in1システムにより、物理メディアの音楽とデジタル音楽データを1台のデバイスで再生することができる。

※この記事は海外のQobuzからの翻訳です。日本の製品仕様とは異なる場合があります。


ラックスマンは、昔からCDプレーヤーを作ってきた。D-500XsやD-107uのような伝説的なモデルもある。そのラックスマンの「u」シリーズが「X」シリーズに変わり、今回のD-07Xも「X」シリーズの一つとなる。このシリーズには、他にD-10XとD-03Xの2機種があり、D-07Xは正にこの2機種の間に位置するモデルだ。外観の美しさは似ているが、コンポーネントや内部のデザインは、シリーズとともに進化している。

製品仕様

●CD/SACDプレーヤー&DAC

● 価格 : 825,000円(税込)

● D/Aコンバーター : ローム社製BD34301EKV(モノラルモード)×2(768kHz/32bit、DSD、MQA)

● 全高調波歪率 : CD 0.0016%、SACD 0.0007%、USB 0.001%

● S/N比(IHF-A) : CD 122dB、SACD 125dB、USB 122dB

●入出力端子: 同軸入力(RCA)×1、光入力×1、USB-Bデジタル入力×1、同軸出力(RCA)×1、光デジタル出力×1、アンバランス出力(RCA)×1、バランス出力(XLR)×1、コントロール入力×1、コントロール出力×1、トリガー入力×1

● 寸法 : W440×H132×D410mm

● 重量 : 17kg


ラックスマンD-07Xの概要

D-07Xの外観は、まさに高級なHi-Fiオーディオ機器だ。高品質な部品で作られ、ボタンのフィット感や感触も一級品。日本で製造されており、D-07Xのデザインのほとんどは、優れたモデルであるD-10Xから受け継がれている。

ラインはすっきりとシンプル。デザインに華美さはなく、控えめな存在感を放っている。2種類の大きさのボタンが配置あり、ディスプレイ下にある大きいサイズのボタンは、再生操作に対応。他の4つのボタンは、後ほど紹介するいくつかの機能に使用される。

薄型のディスクトレイはゆっくりと動き、高品質なプレーヤーにふさわしく、ほとんど無音で無駄な動きがない。高剛性LxDTMメカニズムはラックスマンが開発したものだ。強固なボックス構造、トッププレート、アルミキャスト製トレイを採用し、振動を排除することで、最高のレーザー読み取りを実現する。

内部は、すべての回路がパーティションで区切られている。全体は、7つのセクションにパネルで区切られており、2階層になっている。上段には、従来モデルD-06uに対し50%パワーアップした電源トランス、再生メカニズム、アナログ出力ボード、フロントパネルと画面管理回路が配置。下段には、電源基板、再生メカニズム管理基板、デジタル入出力基板が配置されている。

D-07Xの際立った特徴のひとつは、デジタル入力を備えたDACを内蔵していることだ。そのため、CDプレーヤーとしてはかなり充実した入出力端子となっている。まず、アナログ出力はアンバランス(RCA)とバランス(XLR)の2系統を用意。デジタル出力は同軸と光の2系統があり、変換ステージを無効化することが可能。さらに、同軸、光、USB-Bの3系統からのデジタル入力を装備し、D-07Xが多くの種類の外部ソースをアナログに変換できることが分かる。

この変換が可能なのは、ローム社製の最高峰チップBD34301EKVをデュアルモノ構成で搭載していることによるものだ。このチップはディスク内容と外部デジタルソースの内容を変換するために使用され、高精度・低ノイズクロックと組み合わせられている。デュアルDACは、アナログ出力信号性能向上のため、非常に高い周波数のフィルタリングを組み込んだバッファー回路と組み合わされている。

Luxman D-07Xの操作性

ディスプレイはラックスマン特有のオレンジ色のピクセルで構成。トラックナンバーや経過時間、DACモード時のサンプルレートなどの情報を表示。また、LEDインジケーターはデコードステータスを示す。例えば、デジタル出力がアクティブになると、LEDが点灯。

D-07Xはマルチフォーマットステレオプレーヤーであり、CD、SACD、MQA-CDなどを再生することができる。フロントパネルにある3つのLEDは、再生中のディスクの種類を示すようになっている。さらに、D-07XはデジタルUSB入力で外部ドライブからMQAを再生できるため、MQA LEDはファイルタイプによって色が変化する。

D-07Xは、DACを他のソースと共有することで、2in1デバイスとして機能する。同軸および光入力は、最大192kHz/24ビットのストリームに対応。USB入力は768kHz/32bitまでのファイル、MQAやDSD512に対応。この点で、D-07Xは独立したDACとも言えるだろう。フロントパネルの小さなボタンひとつで、ディスクプレーヤーからデジタル入力への切り替えが可能だ。

また、すべての機能を簡単にコントロールするためのアルミ製リモコンが付属している。フロントパネルのボタンと同様、DSD再生時のFIRフィルターの切り替え、ディスプレイの明るさを調整したり、遠くからでもよく見えるようにディスプレイ文字表示の大きさを切り替えることができる。また、テンキーはもちろん、プログラミング再生やリピート再生、シャッフル再生も可能。

試聴体験

Merging Anubisプリアンプ、ElacのDPA-2パワーアンプ、DynaudioのSpecial 40ブックシェルフスピーカーに接続し、試聴を行った。CD、SACD、MQA-CDを使用し、RoonとQobuzを搭載したMacをD-07XにUSBで接続した。

まずはジャズ・ボーカルからテストを開始した。Gabi Hartmann(ギャビ・アルトマン)の歌声は、ふくよかさと程よい甘さをもって再現されている。自然で繊細な音色が際立つサウンドだ。バックで鳴る楽器の音から切り離されたはっきりした歌声が、スピーカーの向こうで形作られる。ドラムの低域の迫力と深みは本格的な響きで面白い。クラリネットやピアノの音色も正確に表現されている。

続いて、バンドVulfpeckのファンキーな最新アルバム『Schvitz』を視聴。ドラムやギターのアタックが感じられ、音の立ち上がりと放たれる時のスピード感も良く余韻を残さない。柔らかい音も、必要以上に主張することなく、よく再現されている。D-07Xは決してやりすぎず、アナログに変換された音を見事に美しく再現してくれる。

D-07Xはあらゆる音楽を読み解き再現することができるが、大編成のオーケストラ演奏を聴く時にこそ、その真価を発揮するだろう。ジョン・ウィルソン指揮のラフマニノフ:交響曲第3番は、リスニングルームを素晴らしい広がりと深みで満たしてくれた。D-07Xは微細な情報も見逃さず、それが各楽節の効果的な配置や正確な音の重なりにつながっている。そして、拡声器が消えてしまったかのような、攻撃性のない情熱的なシンフォニーを忠実に再現してくれるのだ。

最後にそれぞれの対応フォーマットで数枚のディスクを聴いてセッションを締めくくった。同じアルバムを聴いてみると、CDフォーマットでも上記と同じようなクオリティを楽しめることがわかった。SACDやMQA-CDも数枚再生して高解像度を楽しんだが、躍動感、音質の尊重、全体的な充実感など、DAC経由のストリーミングと同じクオリティの恩恵を受けているのは明らかだ。

最後に

ラックスマン D-07Xは、DAC機能を付加したCDプレーヤーとしても、CDプレーヤーと一体化したDACとしても捉えることができる。メインDACとして使用することも可能で、物理的にも非物質的にも音楽ライブラリを1つの変換プラットフォームで楽しむのに最適だ。D-07Xを使えば、いつもより音を大きくして聴きたくなるだろう。音の緊張を取り除くかのように、耳に優しいリラックスしたサウンドを提供するのだ。しかも、音楽本来の自然さを損なわない。D-07Xは、物理的な音楽と非物質的な音楽をスムーズに融合させることを目指す高音質オーディオシステムにおいて、完全に成功を収めたと言える。