Testing Ground

Chord Mojo 2 + Poly 試聴: ポータブルで連結可能なハイフィディリティDAC/ヘッドフォンアンプセット

Chordは、ハイエンドオーディオ機器と、ヘッドフォンリスニングを目的とした小型機器の両方を製造している。今回は後者のMojo 2を取り上げ、このポケットにすっぽり収まるヘッドホン・アンプ付きDACの多彩な機能と、専用ストリーマー/サーバーPolyの拡張性を探ってみた。

※この記事はQobuz海外版からの翻訳です。日本の状況とは異なる場合がありますのでご了承ください。

英メーカーのChordはその近未来的なデザインで長らく知られてきた。長い管状の脚、青い照明、ミステリーサークル風のデザインは、まるでSFの世界をイメージさせる。これらはスペースに妥協しない一流のオーディオシステムを対象としている。これに加えて、Chordはあらゆるリスニング要件に対応できるよう、コンパクトな製品も数多く生み出している。Mojo2はそのポータブルシリーズを代表するにふさわしい製品だ。ブランドのデザインスタイルを保ちながら、Chordの強みを完璧に際立たせている。Mojo 2には、Mojo専用ストリーマー/サーバーPoly も付属している。


製品仕様

● Chord Mojo 2

● ポータブルDAC/ ヘッドフォンアンプ

● 価格: 79,450円(税込)

● 対応サンプリング周波数: 最大768 kHz/32 bit、DSD256

● 接続: micro-USB 入力×1、USB-C入力×1、同軸デジタル入力×1、光デジタル入力×1、アンバランス 3.5mm ミニジャック×2、充電用USB ポート×1

● 外形寸法: 約W83×H62×D22.9mm

重量: 185 g


Chord Mojo 2の概要

ChordのMojo2はポケットサイズの完璧な製品だ。ブラック・アルミニウムの筐体には、白抜き文字で「Mojo」の文字があしらわれている。デバイス前面の小さな丸みを帯びたノッチにはブランド名が記されており、同社の典型的な美学を彷彿とさせる。

コネクターは二つに分かれている。片側には、3.5mmステレオミニジャックのイヤーフォン出力が2系統ある。この2つは連動しているので、個別にボリュームコントロールをする必要がない。反対側には4種類のデジタル入力(Micro USB 、USB Type-C、同軸、光)がある。micro-USBとUSB-C入力はスマートフォンやPCにもつなげることができる。

オリジナルのMojoにはなかったUSB-Cポートが、Mojo 2には追加されている。また、2つのマイクロUSBポートは、それぞれのアイコンで明確に区別されている。内蔵バッテリーの充電用の2つ目のマイクロUSBポートには、充電状態を示す小さなLEDもついている。Mojo 2の 8時間のバッテリー寿命を得るには、約5時間の充電が必要だ。

Mojo2は4つのゴム製の脚がついており、しっかりとしたグリップの設計になっている。これはオーディオシステムの一部として使ったり、デスクトップPCと組み合わせてDACとして使用したりする際には非常に便利だ。オリジナルのMojoと同様に、デジタル音源を最大768kHz、32bitで再生することができる。

Polyは、Mojo2の拡張機能として使用することが可能だ。2つのデバイスを安全に接続するために、DACの入力ソケットと並ぶ2つのツメがある。ただし、Chordは、オプションのカバーを使用して両方のデバイスを保護することを勧めている。

Polyが接続されるとMojo2の入力部分にはアクセスできなくなり、側面に見えているmicro-USBポートで二つのデバイスを同時に充電することになる。その他にmicro-USBポートを使ってMojo2をフル機能の音楽プレーヤーとして活用することができる。それだけでなく、Polyを接続することでWi-FiとBluetoothに接続可能になるので、ストリーマーとしても使うことができるのだ(これは携帯用としても、所定の位置に固定しても使用できる)。

Chord Mojo2の操作性

Mojo2には、バックライト付きビーズ型ボタンなど、これまでのChordで慣れ親しんできた機能が踏襲されている。たった4つのボタンだが、このデバイスでできることはたくさんある。ただし、各機能と設定は、それぞれのボタンの色、または色の組み合わせに対応しているため、マニュアルがないとコントロールを操作するのが難しい場合がある。カラーコードを覚えるには少し慣れが必要となるかもしれない。

Chordの本体にはマニュアルが付属していないが、オンラインでPDFファイルをダウンロードできる。これは、製品に変更や更新が加わったとしても、常に最新のマニュアルを確認できる面では便利だが、設定を制御するためのボタンの色や、色の組み合わせを確認する時には工夫が必要かもしれない。基本的には、Mojo2の4つのボタンを使用して、音量、クロスフィードモード、ボタンの明るさ調整などができる。さらに珍しいことに、このデバイスには、+/- 9段階の調整範囲を持つ4 バンドグラフィックイコライザーが搭載されている。

Mojo 2とPolyをリンクすると、アプリが使用できるため、これを使ってオペレーティングモードを選択できる。また、従来のブルートゥース・オーディオリンクとは別に、Wi-Fiをレシーバーまたはトランスミッターとして設定することも可能だ(ホットスポットモード)。レシーバーモードでは、Roon、DLNA、または AirPlay経由で音楽を再生できるように、PolyをWi-Fiネットワークに接続する必要がある。トランスミッターモードでは、ミュージックサーバーとなって、メモリーカードに保存された音楽を直接Wi-Fiで接続された他のオーディオプレーヤーに配信することができる。

ChordのGofigureアプリでは全ての設定が可能だ。このアプリを使えばPolyのステータスやバッテリー残量などの情報が得られる。一部の機能は限定的であるが、なにより、Roonを介してDSDファイルを再生をしたり、Web ラジオを再生したりできる。

試聴

何回かのステップにわけて体験してみた。まず、iPhoneをUSB入力に接続し、次に MacBookをUSB-Cに接続してから、Poly拡張機能をRoonモードで使用して、ビルトインのQobuzとお気に入りのプレイリストを楽しんだ。ここでは手持ちのBeyerDynamic Amiron Home ヘッドフォンを使用した。Mojo 2の電源ボタンは、再生する楽曲のオーディオクオリティに合わせてさまざまな色で光る。

私たちはまずレナード・コーエンへのトリビュートアルバム『Here It Is』から試してみた。ノラ・ジョーンズによる「Steer Your Way」のカバーは、Mojo 2によって見事に再現されている。再生の軽さは、デバイスが音のレイヤーを尊重する方法のおかげで、すべての楽器の音を楽しむことができる。シームレスに流れるボーカルおよびバックボーカルと同様に、パーカッションの音も最高だ。サックスが登場すると、ボーカルの後ろで繊細な音を奏でる。ロバート・グラスパーのアルバム『Black Radio III』では、ヘッドフォンから無数の音が爆発するような、リアルな奥行き感と、広く開放感のあるサウンドステージを作り出している。

Justiceの最後のEPである「Planisphere」では低周波を探ることにした。これらのトラックは、Mojo2のニュートラルなサウンドシグネチャを完全に特徴付けている。何も飾ったり強調したりしようとはしない。すべてを非常にスムーズに再生できるこの能力により、あらゆる音楽スタイルを尊重するという意味でMojo2はHi-Fiデバイスと呼べるだろう。もちろん、私たちが使用しなかった4バンドEQを使えば、好みによってサウンドにブーストを加えることも可能だ。

デンマーク国立管弦楽団による『カール・ニールセン:交響曲第4番』を聴いていると、Mojo2のダイナミクスに感服させられた。静かで抑制されたパッセージと劇的なセクションが素晴らしくスムーズに交互に現れる。譜面台の広がりのおかげで、サウンドステージはものすごく広く感じられる。この分離と垂直性は、オーケストラの各セクションを区別できることを意味し、わずかな労力で1つの特定のセクションまたは音楽全体に集中できるようにしてくれる。Mojo2の最高品質の一つとして、誇張や人工的に手を加えることなく楽に音楽を再生できることが挙げられる。


最後に

Chord Mojo 2は注目すべきポータブルDAC/ヘッドフォンアンプだ。購入して後悔することはまずないデバイスであろう。コンパクトで、数秒で準備万端、どんなオーディオフォーマットでも再生可能。カラーボタンの使いにくさなど多少の改善点はあるが、それでもデバイスの総合的なパフォーマンスに弊害はない。Mojo2は安心感を持ってリスナーが音楽を楽しむことに焦点を当てている。音の再生はシンプルでナチュラルだが、4バンドEQを使用すると、ヘッドフォンの欠点を修正したり、必要に応じてサウンドをカスタマイズしたりできる。Poly拡張機能は、多くのシーンでより便利なワイヤレス接続のすべての可能性を広げてくれる。この2つのデバイスコンビで多機能且つ、省スペース、プラグイン/バッテリーパワーのHi-Fiプレイバックツールが叶う。このレベルの使い勝手の良さはまさに無敵といえる。