Testing Ground

Hifi ROSE RA180試聴: レトロな外観に未来志向の機能とパワフルかつウォームなサウンドを持つアンプ

RA180プリメインアンプのデザインは、レトロな機械が持つ美しさを愛する人たちにアピールするはずだ。このプリメインアンプは、すぐ近くに立っただけで感覚を刺激してくる。そう、HiFi ROSEは、クラシックさと近代的なテクノロジーのマリアージュという新しいスタイルを提示しているのだ。その結果として、このデバイスは驚くほど操作しやすく、しかも信じられないほどのサウンドパフォーマンスを聴かせてくれる。

※この記事はQobuz海外版からの翻訳です。日本の状況とは異なる場合がありますのでご了承ください。

韓国のオーディオブランドHifi ROSEは新しい会社で、まだ創業して5年しか経っていない。しかしこの短い期間で確固たるブランドイメージを築き上げてきた。同社が最初に発表したのはストリーマーが中心で、どれもが美しさを前面に押し出した製品だった。Hifi ROSEが選んだデザインは、かなり大きく全体を一目でみられるタッチスクリーンを持ち、接続しているデバイスをフロントパネル全体に表示するデザインで、このデザインに対して「オーディオ・ウィズ・スクリーン(スクリーンで見るオーディオ)」というコピーをつけた。採用されたグラフィックなインターフェースはスマートフォンに似ていて、これによってHifi ROSEのデバイスの機能に常にシンプルかつ直感的にアクセスすることができる。以前RS201Eモデルのプリアンプ段を試聴し、その性能に驚かされたことがある。

RS150は現在、このブランドのストリーマーの最高位機種に位置付けられている。同機では、エレガントかつ実用的な音楽へのアクセスと再生のソリューションが、ハイファイ機器に典型的な幅の中に収められている。そしてそれだけではなく、Qobuzが最初から統合されているのだ。Hifi ROSEはこのストリーマーを使用するために、外観的に同じサイズになるRA180アンプを生み出した。ストリーマーが大型のタッチスクリーン(インターフェースとして)によってデジタルの世界を寿いでいる一方RA180は完全なアナログとなっており、それがいくつかのボタンやスイッチ、ノブなどで両者を接続とコントロールできるようになっている。

製品仕様

●プリメインアンプ

●価格:1,320,000円(税込)

●出力:200W(4Ω)×4、400W(8Ω)×2

● ダンピングファクター :150以上

●全高調波歪率:0.006 %(50W)

●入出力端子:バランスXLR入力×1、アンバランスRCA入力×3、フォノ入力(MM/MC)×1、サブウーファー出力×1

●外形寸法:W430×H110×D350 mm

●重量:16.7 kg


Hifi ROSE RA180の概要

RA180のデザインは、今日のハイファイ界の中でも傑出している。HiFi ROSEは、単にレトロやビンテージの雰囲気を追いかけるだけのブランドではなく、他ではなかなか見られない姿勢を示してくれる。スイッチやボリュームノブは、60年代のナグラをほうふつとさせる部分がある。だがフロントパネルに並ぶコントロール類の多くはオーディオ機器、特にハイエンド機器にはまだ例の少ない目新しいものが多い。

今日のハイエンドオーディオ機器は、小型化の波と闘っている(あえて大型化するアプローチを見せるメーカーもわずかにあるが)。ROSE RA180アンプは、シャーシとコントロール類を単一の色でまとめることで、シンプルな外観を保っている。目立つための色やデザインは使われていない。むしろモーター駆動のボリュームノブにやり過ぎ感を覚えるほどだが、これはこれで同機の魅力の一つであり、友だちに見せたくなるような贅沢な要素と言えるだろう。

VUメーターとボリュームインジケーターを含む大半のコントロールには黄色のバックライトが搭載されている。いくつかの機能はスイッチで完全にオフにすることができ、オフにした際にはそのボタンのバックライトは点灯しなくなる。バックライトの明るさは3段階で調節可能だ。この機種にはやわらかい照明が合っていて、暖かい光がゴールドの丸いダンピング脚(Hifi ROSEのカスタム品)に映える。このダンピング脚は三脚の原理が応用されており、1つは前部のセンター、後部に2つの計3点で構成されている。

コネクター部分は、ステレオプリメインアンプとしてはかなり個性的だ。普通なら、異なるソースの入力に対応した多くのジャックが並ぶものだ。ところが本機に搭載されているのは、アンバランスのアナログ入力端子とバランス端子だけだ。RA180にはデジタル入力はなく、したがってDACも搭載されていない。この機能については、他のデバイス、つまりストリーマーや専用の外部DACを接続する必要がある。また、サブウーファー用のモノ出力も不要と判断されている。

RA180を見て最も驚くことの一つが、バックパネルの3分の2の面積を占める、8組のスピーカー端子だろう。普通は2組のスピーカー用に2組があるだけで、モデルによってはA、B、A+Bの各モードで2組のスピーカーを駆動するための4つの端子があるくらいだ。ところが本機はその倍の端子を持っている。これは、RA180が200W(4または8Ω)で4台のスピーカーを駆動する4チャンネルのアンプであることによる。バイアンプによって1組または2組のスピーカーへの出力が可能だ。また本機は、必要に応じて400W×2チャンネル(BTLモード)への切り替えも可能で、これによって2組のスピーカーを使うこともできる。

詳細に入る前に触れておきたいのだが、RA180にはHifi ROSEが名付けたClass ADという増幅技術が使われている。この技術によってクラスAの音質と豊かさ、そしてクラスDのパワーとスピードが同時に得られる。本機には一般的なシリコントランジスタではなく、GaN FET(窒素ガリウム)トランジスタが使われている。これによって応答時間が大幅に短縮され、ほぼ完璧な出力の直線性が実現される。またこの回路は最高100 kHzにのぼる極めて広い周波数をカバーしており、スーパーツイーターを装備したスピーカーを接続してハイレゾ音源を再生した時に、全周波数帯の再生が可能になっている。

Hifi ROSE RA180の操作性

RA180のフロントパネルは、はっきりとエリア別に分けられていて、各エリアの機能を理解するのに少し時間がほしくなるかもしれない。左端には大きいロータリースイッチがあり、5つのライン入力によるソースの選択に用いる。そのすぐ右にはオン/オフのボタンとその下のピュアダイレクトモードのコントロールスイッチがあり、これをオンにすると複数のサウンドコントロールステージがバイパスされる。その下では出力A/B(同時に駆動できない1組または2組のスピーカー用)の切り替えスイッチがある。ここにはディマースイッチとサブソニックフィルター、ミュートスイッチも配置されている。

六角形のエリアの中には1つのコントロール、つまりボリュームだけがある。ポテンショメーターが第1ギヤを回し、これが左右の出力チャンネルに対応している、さらに小さい他の2つのギヤを回す。このギヤは、ボリュームのレベルを示すもう一つのギヤにも連動している。この隣には、入力レベルを示す2つのメーターが配置されている。このメーターを見て選択した入力からの音のレベルをチェックしてから、ボリュームを回すとよい。

中央上部のコントロール類はプリアンプで、ベース、トレブル、バランスからなる。左側のアクチュエーターは、このセッティングを有効にしたりパスしたりできる。中央下部には、フォノ入力のコントロール(MM/MC互換)がある。2つのモードはリアパネルで選択可能だ。バランスコントロールの下の2つのノブで、可変EQを選択できる。1つのノブはターンオーバーを、もう1つのノブはロールオフをコントロールできる。

下部左側の最後のエリアはアクティブクロスオーバーのコントロールで、増幅後の出力信号に関するものだ。ここで600~6,000 Hzの範囲の特定の低音域をカットして、ゲインを調整する。この機能によって、専用の出力端子に接続したサブウーファーの機能を最大限に発揮することができる。サブウーファーについては、クロスオーバーの設定が必要だ。4つのスピーカー端子の間のアクティブクロスオーバーは変化せず、常に同じ周波数帯を受け取るようになっている。周波数を振り分けるのは、スピーカー側のクロスオーバーに任せられている。

このデバイスには、アルミ筐体の小型軽量のリモコンが付属している。主要なコントロール類全てに対応しているので、必要な機能に簡単にアクセスできる。アンプのオン/オフ、ミュート、5つの入力の選択、ボリューム調節が可能だ。モーター駆動のボリュームコントロールと入力セレクターの使い心地がよく、ソファに座りながらその動きを見るのは、リスニングに追加される楽しみの一つだ。

試聴体験

まずRA180を、私たちの試聴用システムのセンターに設置した。ソースとしてRoPieeeカードを挿入したRaspberry Piボードを使用し、USB出力によるHi-Res Roon Endpoint互換プレイヤー用に設定した。ここにDACを加える必要があったため、プレイヤーとROSEアンプの間にMytek Brooklyn DAC+を加えた。さらに所有のディナウディオ製のブックシェルフ型スピーカーをRA180に接続した。

新たにリリースされたアリシア・キーズのアルバム『KEYS II』デラックスバージョンは、丸みのある暖かいサウンドを聴かせてくれた。ピアノの音が空間を満たし、その音で音場の全体像が形づくられる。アリシア・キーズの伸びやかな高音域の歌声が、縦方向の音場の形成に重要な役割を果たしている。そして低音域が全体を支えて、印象的な深みを生み出す。とても濃密なサウンドで、すべての楽器が空間に完璧に配置されることで、センターの音が明確になっている。

ココロコのアルバム『Could We Be More』では、クレオール風味のジャズの落ち着きと構成感が伝わってきて、RA180がベルベットの手袋に包まれた鉄の拳であると感じさせてくれた。ボリュームの反応は速いので、音量を上げる時にはスピーカーや自分の耳を守るためにも注意が必要だ。再生音に意図的な誇張はなく、各楽器の音の穏やかでリラックスした音を伝えてくれる(音色の再現精度が高いことで各楽器の輪郭も明確だ)。本機の音は非常に魅力的で、音楽の魅力を損ないかねない他のハイファイ機器とは一線を画するものがある。

ベースのコントロールについては、RA180は間違いなくトップクラスの性能を持っている。Hifi ROSEが実現した、全帯域を滑らかにつないで自然に聞こえるように再生するテクノロジーの威力が発揮されたのが、ハミングバードのアルバム『Hummingbird』だ。パワフルなベースが与えるインパクトは決して揺らぐことはなく、音場が複雑になる場面でも変わることがない。私たちのディナウディオのスピーカーに加えてサブウーファーを使っても許してはもらえただろうが、使わずにダブルチェックを行った。音のアーティキュレーションと深みが驚異的な精度で再現され、まさに喜びに満ちたリスニング体験になった。

最後に、ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団によるドヴォルザークの「交響曲第七番ニ短調」を聴いた。オーケストラの音は深みがあると同時に、各楽器の配置も明確に聞こえる。目を閉じるとスピーカーの背後の舞台とさらにその後ろの壁の存在がリアルに伝わってくる。RA180の大出力が実現するダイナミクスが、各ピースに強さと存在感もたらしている。各楽器が混ざり合うことなく、音の消え際まで対話する様子が聞こえてくる。このアンプは、スピーカーの実力を限界まで引き出してくれるので、よりハイエンドのモデルを手に入れたくなるという問題はまず起こらないだろう。


最後に

HiFi ROSE RA180 プリメインアンプは、間違いなく歴史に残る一品だ。まず、一目見てこのブランドの製品と分かる、個性的なスタイルがある。しかしこのモデルには大胆な面があり、RA180に対する関心が急速に高まることへのリスクがある。次に、コントロールが完全にアナログ環境下で行われるにも関わらず、完璧な機能性が得られている。切り替え可能なフォノプリアンプにアクティブクロスオーバー、そして融通が利く4つのアンプのチャンネルを持っている。そして音のクオリティは予想を超えるものだった。ADクラスを選択した機能とデザインのクオリティの高さによって、高品質、高精度の再生音が実現している。音場はセンターが明確であると同時に広さもあり、中高音域の音のクオリティが非常に高いことによって、微細なディテールまで再現する描写力のある暖かい音が、誇張なく実現されている。卓越したベースのコントロールによって、RA180があらゆる音楽をカバーできることは明らかだ。ネットワークオーディオという自分たちの得意分野から離れても、HiFi ROSEは見た目にも印象的で、驚異的なサウンドを聴かせてくれるステレオプリアンプを生み出したのである。