Testing Ground

Roon Nucleus 試聴: 多機能、マルチプロトコル、マルチゾーンのオーディオファイルハブ

手ごろなものからハイエンドまで、Roonは多くのハイファイ製品を世に送り出してきたことで熱い視線を集めるようになった。その過程の中でRoonは、ハイレゾ音源の再生に欠かせないツールになっただけでなく、音楽サービスと個人のファイルのライブラリーを一つにして、人間工学と機能の面でも進歩を見せている。Roon NucleusはRoonをコントロールするグローバルコントローラーである。

Roonの本当の実力を知るには、まずその機能を知る必要がある。第一にこれは、高解像度の音源を複数のコンパチブルデジタルオーディオプレイヤー(ストリーマー、アンプ、ワイヤレススピーカーなど)で再生することを目指している。Roonは、Qobuz などの統合音楽サービス、あなたの音楽ファイルのコレクション、インターネットラジオという3種類のソースをサポートしている。

Roon Nucleusは、サーバーではない。サーバーは主要な機能ではないのだ。本機は何にもまして、あなたのハイレゾオーディオシステムの指揮者なのだ。コントロール、再生、ファイル管理、オーディオプロセッシングといったすべてのRoonに関連するアクションが、これ一台を通して可能になる。アクセサリーとしてはハードディスクをインストールしてサーバー機能を追加するため、内部にフリースロットを有している。USBとHDMIの各ポートを使ってRoonをオーディオプレイヤーとして使うことも可能だ。


製品仕様

● 価格:Nucleus 305,800円/Nucleus+ 492,800円

●入出力端子:USB3.0x2、Ethernet LAN×1、HDMI×2

● 寸法(W×D×H):W212xH74×D56mm

● 重量:2.5kg


Roon Coreの主な機能

現在のネットワークにはユニバーサルなもの(AirPlay 2、Chromecast、DLNA)から専用のもの(Sonos、HEOS、MusicCast、BluOS)まで、多くのオーディオ再生プロトコルが既に存在している。RoonにもRAATという独自プロトコルがあり、この名称はRoon Advanced Audio Transport(Roon先進オーディオ転送)を略したものだ。比較のために、AirPlay 2プロトコルを例に見てみよう。このプロトコルの動きは以下の通りだ。iPhone上でQobuzアプリからトラックを選択し、これをAirPlay 2互換のオーディオデバイスに転送して再生する。リンクはダイレクトだ。

Roonを使うには、Roonアプリ(PC、スマートフォン、タブレット)が必要になる。このアプリは、物理デバイスのRoon Coreとの交信専用となっている。まず曲を選択すると、後はその曲がRoon Core経由でRoon互換*プレイヤー(又はRoon Output)に送られる。「互換」というのは、サーバーが複数の再生プロトコルをサポートしていることを意味している。RAATだけでなくAirPlay 2、Chromecast、Sonosもサポートしているのだ。Roonを使用するには、どんな場合でも、システムの頭脳としてRoonアプリで更新するRoon Coreが必要になる。


Roon Nucleusの中身は?

Nucleusはある意味、音楽専用のPCと言うことができる。Intelと共同開発された内部部品とデザインは、冷却ファンや可動する機械的部品なして音楽のストリームの理想的なプロセッシングを行うことを目指している。パッシブ冷却を担うのが、大型のブレードを持ったアルミ製シャーシだ。このブレードは丈夫そうな外観を強めている。電源スイッチ以外にボタンはなく、ランプもない。Nucleusはコンパクトかつモダンで、静穏だ。そこには隠さなければならないものなどない。

背面のコネクターはEthernet LANソケット、3.0 USBポート2点、HDMIソケット2点からなっている。動作が重くなったり低下したりすることを防ぐためには、有線のネットワークが必要だ。内部の2.5″ SSD スロットに加えてUSBポートを使えば、外部HDを接続してファイルストレージとして使うこともできる。このポートをダイレクトアウトとして使うことで1つまたは2つのUSB DACと接続することもできる。HDMIも同じ用途だが、ホームシアター用のアンプに接続してマルチチャンネル再生用とすることも可能だ。

Nucleusには、NucleusとNucleus+の2つのバージョンがある。その差は、組み込まれた処理能力にある。Nucleusには、ライブラリー内のファイル数や再生ゾーン数、サウンドプロセッシングなどに限定がある。一方Nucleus+には、そのような限定がない。とは言えベーシック版も、最大100,000ファイルと6つの再生ゾーンを持っているので、大半のユーザーにとっては十分なはずだ。

Roon Nucleusが持つ機能は?

Nucleusは、まずRoon Coreとしてアプリと交信する。そしてあなたのQobuzサブスクや音楽ライブラリーに関連する情報をすべて保存し、複数の基準にしたがって提示する。これによって全コンテンツをミックスして統一し、トランスペアレントな検索を可能にする。例えばQobuzのプレイリストとあなたのプレイリストが一ヵ所に集められる、というイメージだ。どちらのシステムも同じようにレイアウトされ、一貫性のある分かりやすいナビゲーションが行われる。

オーディオストリームはすべて、Roon Coreを通る。Qobuz上で曲を選択すると、それがCoreを通り、それから選択したプレイヤーに転送される。6つのゾーンでそれぞれ違う曲を聴く場合は、6つのストリームすべてがCoreを通る。この大量のデータのせいで、ベーシック版Nucleusに限定を設ける必要のもととなっていて、パワフルさの点でNucleus+に譲ることになっている。

しかし、すべてがCoreを通るという形式には、他にない利点がある。ソースの音質やフォーマットがどのようなものであれ、また選択したデバイスの再生能力がどのようなものであれ、音楽が常に再生される、という点だ。Nucleusは、オーディオストリームを再生デバイスの能力にリアルタイムで適合させることができる。例えば44.1kHz/16ビットのみに対応したワイヤレススピーカーの場合、192 kHz /24ビットのハイレゾオーディオストリームを転送時に44.1/16に変換する。ファイルフォーマットに関しても同様のことが行われる。Nucleusは、DSDフォーマットをサポートしていないプレイヤーにも、DSDファイルを事前にその機種が対応するフォーマットに変換して転送することができるのだ。

Nucleusは、すべてのオーディオストリームを制御するこの機能を使って、デジタルプロセッシングを行うことでそのストリームを拡張できるのだ。サンプリングレートを手動で変えることもできる。室内のスピーカーを接続する際には、Roon Coreではパラメトリックイコライザーやヘッドフォン用のチャンネルミキサー、そしてより知識のある人には複雑なフィルターを使うこともできる。すべての設定が個々のリスナーに専用のもので、それがNucleus内に保存される。


サーバーモードのNucleus

デフォルトの状態ではNucleusにハードディスクは内蔵されていない。この機器は音楽を保存するものではなく、シェアしたフォルダーやNASサーバーなどに保存したあなたのライブラリーを、ネットワークを通じてカタログ化するものなのだ。だが同時に、Nucleus の4つのネジで固定されている底面のパネルを外して、2.5″ SSDを追加することも可能だ。SATAコネクターがあらかじめ取り付けられている。

また、1つまたは複数の外部USBドライブも追加できる。各メディアに保存されているすべてのファイルを統合して、Nucleusが管理するライブラリーが構成される。内部ストレージをミックスして、望むだけの数のフォルダーを追加し、そのフォルダーをネット上でシェアすることが可能だ。

CDコレクションをまだデジタル化していない場合は、NucleusにUSB CD-ROMプレイヤーを接続してもよい。そうするとNucleusがコピーステーションになる。スキャンされたCDは自動的にFLACフォーマットに変換されて、内部HDかUSBドライブに転送される。CD-ROMプレイヤーを接続すると、直ちにRoon Coreインターフェースが“CDリッパー”セクションを追加して、必要な時に読み込み中のディスクを取り出せるようにする。


プレイヤーモードのNucleus

Nucleusは設定後直ちに、RAAT、Chromecast、AirPlay、Sonosなどのプロトコルに対応したネットワーク上の互換プレイヤーを自動的に認識する。コントロール用デバイスも、それがタブレットでも、スマートフォンやPCでも、独立した再生ポイントとなる。

Roonは、ダウンロードのバランス向上のために1つまたは複数の独立したプレイヤーの使用を推奨している。それにより、そのそれぞれに独自の機能を持たせることができる。とは言え、USBやHDMI端子によってNucleusをプレイヤーとして使うことも可能だ。例えば、1つまたは複数のUSB DACを接続して複数のオーディオゾーンを作ることもできる。HDMI端子は、ホームシアター用アンプにもハイファイ用アンプにも接続できる。ただしこれは旧型HDMIであり、HDMI ARCには対応していないので注意されたい。私たちは2つのUSB DACとホームシアター用アンプを同時に接続して3つのゾーンを作ってみたが、困難なことは何もなかった。音のクオリティは明らかに、接続した機器に依存する。Nucleusはシンプルに、オーディオストリームをその機種にあった最良の解像度で送信する。



最後に

Roonシステムは、ナビゲーションの簡便性やハイレゾソリューションの統合、そしてマルチルーム/マルチプロトコルストリーミングの面で、ある意味完璧の域に達している。Roonは、完全なインターフェースと機能を目ざして常に進化している。Qobuzは、Roonを完全に統合して、通常使用するセクションすべてへのアクセスを可能にしている。Nucleusは、あなたのRoonシステムの心臓部を形成するのに欠かせない、すぐに使えるようになるツールだ。USB DACやHDMIを通じて、サーバーにもプレイヤーにもなるし、CDのリッピングも可能だ。最後に、Roonは、Nucleus専用として作られた拡張機能によって、ホームオートメーションシステムへの接続も可能だ。Nucleusは、市場でも類を見ない、ハイエンドでユニバーサルなオーディオファイル向けツールだ。

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