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藤田恵美:スタジオ・クオリティのサウンドとライヴ感が両立するヘッドフォン・コンサート

コンサート・ホールの豊かな響きをスタジオ・クオリティでレコーディングするため、ライヴ形式ながらPAは一切行わず、観客はヘッドフォンでその音楽を鑑賞するというチャレンジングな録音手法で注目された藤田恵美さんの『Headphone Concert 2021』はハイレゾのリリースも含めて大きな話題となりました。そして今年、その第二弾となる作品『Headphone Concert 2022』が完成。前回とはホールが異なり、また、デジタル録音の方式もPyramixによるDXDになるなど変更点も見られた今回のレコーディング・セッション。“セットリスト”はオリジナルからカヴァーまで多彩なナンバーがラインアップされています。ここでは藤田恵美さん、本作のプロデューサー/レコーディング・エンジニアの阿部哲也さん(HD Impression)のお二人に、レコーディングの様子やミックスのことなどをたっぷりと語っていただきました。当日の写真と併せてお楽しみください。

写真:山本昇

『Headphone Concert 2022』藤田恵美


前回の課題を克服して臨んだヘッドフォン・コンサート

――2021年2月18日と19日に行われた「Acoustic Concert 2021」に続き、昨年の10月26日と27日には本作の録音現場となった「Headphone Concert 2022」が催されました。演者もオーディエンスも、この特異な状況に多少は慣れてきた感じはありましたか。

藤田:前回のヘッドフォン・コンサートは私にとっても緊迫感が強い印象がありました。やり甲斐のあることではありましたけど、もう一度あの状況に戻るためにはかなりの決意とエネルギーが必要です。阿部さんから、もう一度やりたいとのお話をいただいたとき、「あのままだとちょっとしんどいかな」と、そのあたりもざっくばらんに相談させてもらいました。

――具体的にはどんなところが課題だったのですか。

藤田:コンサートと言うわりには、そこまではっちゃけることができなくて(笑)。まず、マイクの前に立っても動けないし、うかつに物音を立てることもできません。通常のコンサートなら、お客さまとの掛け合いというか、お互いのエネルギーの交歓によってその場ができていくわけですが、そういうことがやりづらい環境なんです。ヘッドフォンを通じて聞こえてくる音もリアルすぎる(笑)。そんな中でいつもどおりにやるのはなかなか難しいんですね。そこで、レコーディングではあるけれど、通常のコンサートのような、ある意味でもう少しラフなモニターを返してほしいと。阿部さんにとっては機材的に難しいオーダーだったかもしれませんが、「なんとかクリアします」と言ってくれたので、「じゃあもう一度やってみようかな」という感じで。

――モニターの返し方を工夫されたのですね。

藤田:例えば音の分離って、聴く人には大事なポイントだと思うんですが、演者にとってあまりに分離されすぎる音だと緊張感が増してしまうんですよ。人前で歌い演奏するライヴって、それだけでも緊張するわけじゃないですか。それに加えて、いつもとは違う音の環境でやるのはすごくストレスなんですね。そこで今回は、全体の音が適度に溶け合って、一つにまとまっているような返しにしてもらいました。

阿部:DAWを中心にシステムを更新したことで回線数の部分でも余裕があり、恵美さんをはじめ演者の皆さんが望むチャンネルを個別に返せたのは大きかったと思います。

――返しには客席の音も?

阿部:混ぜていますね。アンビエンスを混ぜないと、緊張感を高めてしまうような硬い音になってしまうんです。前回の課題として「モニターにもっと空気感がほしい」という意見がありましたので、会場の音は意識して返していました。恵美さんには特に12chのミキサーを置いて、必要なchをお好みのバランスでモニターできるようにしました。ちなみに、会場のお客さんに向けてはまた別のモニターミックスを作って送っていました。

――場所は横浜市のサンハートホールからサルビアホールに変わりました。キャパ(通常席時)はサンハートホールが300席、サルビアホールが546席と、会場の規模は大きくなりましたね。響きの違いなどはどのように感じられましたか。

阿部:前回のサンハートホールはどちらかというとデッドな響きで、ある程度の広さがあることを条件に選んだものでした。今回のサルビアホールは、これまでにも録音で何度か使っていました。かなり響きはある会場ですが、オンのマイクにもすごくきれいに音が入るんです。広さがあるので、リヴァーブは付くけれど、単独の音が滲まない、とてもいい音。ある意味スタジオよりもいい音で録れるんですよ。セパレートすることはできませんが、(ドラムではなく)パーカッションまでならギリギリなんとかいけるかなと。

――ホールの響きについて、恵美さんはいかがでしたか。

藤田:もう、ステージを歩かせていただいた時点で、「あ、ここはやりやすい!」ってすぐに分かりました。

阿部:うん、そう言ってましたね。

藤田:床の造りからして全然違うんですよ。どこでもそうなのですが、やはり多目的に造られたホールの床はコツコツと響いたり揺れたりして、ちょっとやりづらいと感じることがあります。サルビアホールのステージは床がしっかりしていて、いかにも音楽をするためのホール。安心感がありましたし、天井も高くてステージ自体も広いので、ミュージシャンとの距離が広く取れたのも良かったですね。視覚的にも感触的にも、すごく開放感のあるホールでした。


収録12曲の聴きどころ

――さて、収録曲について伺いますが、今回も絶妙な選曲のセンスを感じます。セットリストはどんな心境で選ばれたのでしょうか。

藤田:前回のヘッドフォン・コンサートでは過去にやったもの、アルバムとして発表している曲から主に選びました。今回は、ここで初めて聴いていただけるものもやりたいと考えました。いつもアルバムを買ってくださる方にも楽しんでいただきたいですからね。そして、ル・クプル時代の曲と、『カモミール』シリーズには廃盤になってしまったものもあったりしますので、その中から人気のある曲も選んでみました。

――収録された12曲は曲調も様々で、全体を通じて楽しめるラインアップになりましたね。

藤田:最後に収録したアンコール曲「Perfect」はアルバムに入れるつもりはなく、当日会場に来てくださったお客さまのために用意していた曲だったんです。お客さまには録音するということで物音を立てないようお願いしたり、演者のほうも通常のコンサートに比べて音量は抑えめで演奏しなければならなかったりしたわけですが、最後くらいは好きなようにやろうと(笑)、楽しい時間も持ちたいなという気持ちで選んでおいたんです。そうしたら、ミュージシャンも自由にやっているし、お客さまからも自然に手拍子が起こって。クジラさん(武川雅寛)も含めてみんなバカでかい音で(笑)、これは録音していたとしてもやはりアルバムには収録はできないなと思いながら歌っていました。すると後日、阿部さんから「〈Perfect〉の最後のテイク(27日のセカンド・ステージ)はすごくいいから、絶対アルバムに入れたほうがいいですよ。音はなんとかしますから」って(笑)。

――そうでしたか。でも、唯一、客席の温かい雰囲気が伝わるこの曲があることで、「ここはコンサート・ホールで、観客も一緒だったんだな」とあらためて認識できます。

藤田:「Perfect」もずっと昔から歌っている曲ですが、日本ではアルバムに入れたことがありませんでした。日本では発売されていない、シンガポールのライヴ盤にしか収録されていなかったんです。その意味でも、いいタイミングでお届けできることを嬉しく思っています。

――フェアーグラウンド・アトラクションのヒット曲であるこの「Perfect」もそうですが、いつもながらどのカヴァー曲もすっかり恵美さんの雰囲気に馴染んでいますね。いずれも、以前から歌ってみたかったものだったのでしょうか。

藤田:そうですね。ただ、尾崎豊さんの「I Love You」は私としては異色のカヴァーだと思います。

――確かに、そう思いました。

藤田:この曲は実は阿部さんの提案でした。あまりにも世界観が違うので、自分からは歌わせていただこうという発想すらなかった曲です。

阿部:「恵美さんが歌ったらどうなるかな」という想像は常にしているのですが、その中で「I Love You」はすごく自然に想像することができたんですよ。恵美さんの世界観に持っていったとき、ちゃんと恵美さんの歌になってくれるんじゃないかと。わりと確信的に提案させていただきました。最初は拒否られるとも思いましたが、「とりあえず1度歌ってみてください」と。で、やってみたら周りの人が「あ、いいね!」って。「ほらね」と(笑)。

――長年ご一緒されているプロデューサーとしての勘が働いた瞬間だったのですね。ちなみにこの曲はアコギの伴奏と歌で始まりますが、出だしは音だけ聴くとスタジオのようなクリアさに驚きました。リヴァーブもきれいです。

阿部:やはりホールの響きも含まれていることによって、音のリアリティがものすごくありますね。そして、空間が広いので、恵美さんのヴォーカルの輪郭がしっかりとれる。確かにライヴの音ではないですよね。

藤田:本当にそうだよね。こっちの緊張感はすごかったですけど(笑)。

――歌い切った恵美さんもさすがです。カヴァーと言えば、日本では「大きな古時計」として知られる「My Grandfather’s Clock」も素晴らしいですね。

藤田:小学校で開催している「OMOIYARI音楽会」というコンサートで、私は必ずこの「大きな古時計」を日本語で歌うんですが、どんな世代の方もみんな知っていて、大きな声で一緒に歌ってくれます。ずっと根強く親しまれて、すごい曲だなと思っていました。子供はもちろん、大人も泣けるじゃないですか。

――まさしく落涙必至。ここで泣かされるリスナーも多いことでしょう。

藤田:こんな名曲が身近にあったと思い出し、世界のリスナーにも向けて、英語詞で歌うのは初めてですが、これを機に採り上げてみました。実は本番で初めて歌ったんですけれど(笑)。

――恵美さんの優しげな雰囲気とよく合っていて……。

藤田:ウイスキーでも飲みながらお楽しみください。

――お酒でも飲みながらと言えば、井上陽水さんの「ダンスはうまく踊れない」もいい雰囲気ですね。

藤田:ライヴしていて楽しい曲の一つです。

――バンドとしてのノリがいい?

藤田:そうですね。リズムがあって、パーカッションを中心に、みんなが楽しみながらリズムをはめていく感じで。いい曲を選べたなと思っています。歌詞も曲も素晴らしいものですが、カヴァーすることで違う世界観で歌えるのがすごく楽しかったです。

――その他、曲ごとの聴きどころなどありましたら教えてください。

藤田:今回はル・クプルの「Sofa」を歌っています。「ひだまりの詩」の次に出したシングル曲で、歌詞は私ですが、曲やアレンジはトーレ・ヨハンソンのチームが作ってくれました。ファンの方たちには、「ひだまりの詩」派の人と「Sofa」派の人がいて(笑)、「Sofa」派にはミュージシャンやアーティストさんも多いんですよ。洋楽的でちょっと玄人受けする曲ですが、その割にまだ日の目を見ていないところもあるので、やはりこの機会にラインアップしてみました。そうしたら、編成は違うけど、ギターの西海君がオリジナルに忠実に再現してくれて。私もかなり好きなテイクになりました。

――このテイクは途中で歌の声がかぶる部分がありますね。

藤田:「あなたといると私になれる」のところですね。あれは、「なれる~」だけ西海君が裏声で歌ってくれています。

阿部:実はそこでもいろいろ試行錯誤がありまして。リハーサルでは恵美さんが全部歌ってから、小節数を増やしてまた入り直すというふうにしていたんですが、西海さんが「やっぱりここは伸ばさずに元の尺どおりにやらないと、この曲の良さが出ないよ」と、その部分を歌ってくれることになったんです。もう、ゲネプロが終わってからのギリギリのタイミングでの変更でした。

――西海さん、芸達者ですねぇ。その他はいかがでしょう。

阿部:恵美さんの歌に注目すると、「Imagine」もとてもいいテイクだと思います。アルバムでは『camomile smile』と『camomile Best Audio 2』にも収録されていますが、個人的には今回のヴァージョンが好きですね。

藤田:『camomile』に収録したヴァージョンは、ジョン・レノンのオリジナルと同じようにピアノの伴奏で始まるんですけど、あるときライヴでギターのアルペジオでやったら面白いんじゃないかと思って1度やってみたんです。そして、そこにクジラさんのトランペットが間奏で入ってきたら、静かに何かを壊していくというか、静かな中に厳かなパワーを感じさせるというか、そんなものが演出できて「これはいいな」と思ったんです。今回のヘッドフォン・コンサートでもそれをやってみたいなと。ただ、この曲に限らずですが、前にどう弾いていたか覚えてなかったりするんですよね。リハーサル中でも「さっきの感じが良かったんだけど…」って言うと、「えっ、どう弾いてた?」なんて逆に聞かれたりして(笑)。クジラさんも西海君もそういうところが素敵なミュージシャンなので、その瞬間にどんなものが飛び出すか、楽しみでもあるんです。そして今回の「Imagine」もとってもお気に入りのヴァージョンになりました。

阿部:このテイクの間奏のクジラさんのトランペットはかなり芸術的で、僕も相当気に入っています。何も考えずに聴いていると、グーッと引き込まれて、気がつくと涙が出ているんです。どんなことを思いながら演奏しているのかは知るよしもありませんが、さすが重鎮ミュージシャンのお一人だと思いました。

――そうでしたか。トランペットのソロはパーカッションとの絡みも素晴らしいですね。そして、ル・クプルのナンバーでは「シーサー」もピックアップされています。

藤田:はい。「シーサー」も、このメンバーだからこそできたアレンジになっていると思います。鳥の声とか波の音とか、パーカッションの佐藤唯史さんによる効果音も入っていて、リラクゼーションになるような気もします。最後には海のやん衆が3人くらい出てきて「エイヤーサッサー」と(笑)、元の曲にはないアレンジを加えてくれています。最初は「一人くらいでいいですよ」と言っていたんですが、みんな楽しんじゃって、好きなところで入ってくるので、なんとかまとまったのがこのテイクでした。

――個性派の集まりですから、統率をとるのも大変そうですね。

藤田:でも、何をやり出すか分からないくらいが楽しいですよね。私たちの音楽は、アレンジをバッチリ決めてから作るものではありません。ある程度の余白を残しておいて、みんなで集まったときにだれが何を弾くのか、弾かないのか。そういうふうにして1曲が出来上がっていく感じなんです。その意味で、「シーサー」も「ダンスはうまく踊れない」も、すごく楽しんで参加してくれているなと思いますね。

阿部:イントロとかも、ステージのたびに変わりますからね(笑)。

藤田:そう! テンポも若干違ったりね(笑)。

――ヴォーカリストとしてはなかなかスリリングなセッションですね。

藤田:そうなんですよ。

阿部:「ダンスはうまく踊れない」はテンポが速すぎると歌いにくくなってしまいますからね。

藤田:早口っぽいところがあるので舌が回らなくなるんです(笑)。

――それにしてもアレンジ面に「ある程度の余白を残しておく」という姿勢こそが、今の恵美さんの音楽に奥行きを与えているものなのかなと腑に落ちました。

藤田:いいものが出てきたときは私も「うわー」ってすごく感動しますからね。

阿部:アレンジのベーシックな部分は、恵美さんと宇戸さんと西海さんの3人で進めていった感じですね。

――なるほど。宇戸さんと西海さんは演奏も含めて大きく貢献されているのですね。そこに、元はちみつぱい現ムーンライダーズの武川さん、元ラストショウの河合さん、そして東京キューバン・ボーイズの佐藤さんという手練れが加わるというこのメンバーもすごいですよね。

藤田:ありがたいことですよね。フフフフ。重鎮の方たちは、宇戸君や西海君が示す大まかなアレンジに「うん、分かったよ」と合わせながら、ご自身の色もしっかり出してくれます。

阿部:逆に、河合さんとか「やっぱり恵美ちゃんの歌はいいね」って言ってましたよ。

藤田:本当?(笑)。それはありがたいです。エヘヘヘ。


時間をかけて行われたミックスのポイント

――では、レコーディングやミックスのポイントをお教えください。DAWはこれまでのDigital PerformerではなくPyramix(ピラミックス)をお使いでしたね。

阿部:はい。今回初めてPyramixを使いましたが、音の印象はやはりすごくアナログに近いものがありました。録音フォーマットはDXD 352.8kHzで、データとしての天井がものすごく高く、ミックスをしていてもPCMとは手応えがまったく違いました。これまでのミックスでは0.1dB単位の調整を行っていたところを、0.03dBくらいの変化が大きく感じられました。恵美さんの歌を少し上げたいと思って、0.05dB上げるだけでニュアンスも変わってきてしまう。骨格が決まったのはずいぶん前でしたが、各楽器との細かなかみ合わせみたいなところは慎重に、十分に時間をかけて行いました。

藤田:最初のほうのミックスでは「あれ?」という部分もあったのですが、阿部さんも同じ印象を持っていたりして、そこからの作業は大変だったと思うのですが、よくぞここまで作り込んでくれました。さすがですね。

阿部:出来上がったミックスを聴いた宇戸さんからも、「今回のヘッドフォン・コンサートはみんなが気持ちよく演奏できたし、録音された作品もすごくいいですね」という言葉をもらえたのは嬉しかったです。僕としても、ここに持ってきたかったという狙いはほぼ達成できたという感触はありますね。恵美さんも、「〈Perfect〉の拍手を聴くまで、スタジオで録ったものじゃないとは思えない」と言ってもらえました。でも、説明がないと最後だけライヴ版だと思われてしまうかな?(笑)

藤田:ああ、それはあるかも。

――正真正銘、すべて同じ会場での録音で、同じようにミックスされたものですね。

阿部:はい。オーディエンスの方たちもずっとあの場にいてくれました。

――DAW上での編集はどの程度行われたのでしょうか。

阿部:今回も各マイクに音がかぶっていますから、基本的に編集は行っていません。今回はまず、どのテイクがいいかを恵美さんと吟味して選んでいますので、音楽的にもレベルの高いところで自然に聴いていただけると思います。それにしても、どのテイクにするかを決めるのは大変でした。

――今回は3ステージだから、3テイクの中から選ばれたわけですね。

阿部:はい。ただ保険で、ゲネプロも録音してました。

――前回の録音では武川さんのトランペットが特に他のチャンネルにかぶってしまって、ミックスに苦労されたということでしたが、そのあたりは今回、少しは改善されたのでしょうか。

阿部:そうですね。ステージが広くなったことで、ミュージシャン同士の間隔もその分広くとれたので、音のかぶりも少しは軽減されましたが、やはり大変ではありました。「ダンスはうまく踊れない」のトランペットもかなり気持ちよく吹いていただいているんですが(笑)、どうまとめるかはけっこう悩みましたね。

レーベル初のDSD 11.2MHzもリリース

――さて、スタジオ・クオリティーのサウンドとライヴ感を両立させるこの試みは、今後も続くのでしょうか。阿部:そこは恵美さんとのご相談ですね(笑)。

藤田:そのときにまた気分を乗せてくれれば、なくはないという感じでしょうか(笑)。なかなか世に知られませんが、ある意味で素晴らしい実験であり挑戦です。続いてほしいと思いますけれど。

――そもそもはいい歌や演奏を、いかに良く録るかという……。

阿部:そうです。それをやりたかっただけなので。恵美さんの「ライヴのいいテイクをそのまま録れないのかな。もったいない」というのがコンセプトの元になっていますからね。それを拾えて、僕としてはとても満足しています。

――ありがとうございます。では最後に、e-onkyo musicリスナーへのメッセージをお願いします。

阿部:やはり今回はPyramixを使ったことで、音の天井が上がり、僕自身が音楽により入り込むことができ、すごく面白かったです。時間をかけたミックスも、本当はもっと手を入れたいところもあったりするのですが、キリがないので今回はこの辺で聴いていただけたらと思います。HD Impressionとして初めてDSD 11.2MHzでもリリースしますので、ぜひお楽しみください。

藤田:オーディオ的な魅力もありながら、ライヴならではの雰囲気も楽しめるというこのシリーズの醍醐味がより多くの方たちに伝わってくれたら嬉しいですね。今後はこのサイトから世界配信もされるとのことですので、このアルバムが海外のオーディエンスの方たちと出会うきっかけにもなってくれるといいなと思っています。あと、私の周りにはアルバムのタイトルから「いいヘッドフォンで聴かないといけないの?」と思われる方が多いのですが(笑)、決してそういうわけではございません。e-onkyo musicリスナーの皆さまには言うまでもないことですが、スピーカーでもヘッドフォンでもお好きなスタイルでお楽しみください。