Interviews

森口博子によるガンダム・カバーソング『GUNDAM SONG COVERS』シリーズ

森口博子の『GUNDAM SONG COVERS』シリーズは、自身のデビューにも所縁のあるガンダム・ソングをカバーする、ガンダム・ファンのみならず多くの音楽ファンをも惹きつける人気シリーズだ。その待望の第3弾では、TM NETWORK、塩谷哲と佐藤竹善によるSALT&SUGAR、オーイシマサヨシ、押尾コータローら超豪華ゲスト陣を招いて珠玉のガンダム・カバーを披露。ここでは、人気オーディオライターの“だいせんせい”こと工藤寛顕氏をインタビュアーに、今作の主役である森口博子さんにインタビューを行った。


男性ヴォーカル楽曲にスポットを当てたカバーソングアルバム

2019年リリース『GUNDAM SONG COVERS』オリコンウィークリー3位、「日本レコード大賞」企画賞受賞。2020年リリース続編『GUNDAM SONG COVERS 2』オリコン&ビルボードウィークリー2位獲得。と躍進を続けてきたシリーズ第3作『GUNDAM SONG COVERS 3』では、数あるガンダムソングの中から男性ヴォーカル曲だけをセレクト!発表のたびに話題となってきた豪華なコラボミュージシャンには、シリーズ全作品に参加している寺井尚子、塩谷哲、押尾コータローをはじめ、鮎川麻弥、VOJA、オーイシマサヨシ、神永大輔(和楽器バンド)、SALT&SUGAR〔塩谷哲(Pf.)&佐藤竹善(Vo.)〕、TM NETWORKの参加が決定!なかでも「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」主題歌「BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を越えて~」を楽曲のオリジナルアーティストであるTM NETWORKがリアレンジする試みや、和楽器バンドの尺八奏者である神永大輔の参加、シリーズ初となるオーイシマサヨシや佐藤竹善(SING LIKE TALKING)らシンガーとのコラボレーションなど、大注目間違いなし!!ボーナストラックとして「機動戦士Ζガンダム」メドレーが収録され、「機動戦士Ζガンダム」の前期オープニングテーマ「Ζ・刻をこえて」を歌った鮎川麻弥と、後期オープニングテーマ「水の星へ愛をこめて」を歌った森口博子とのメドレーコラボレーションが実現!


INTERVIEW:森口博子

――「2019年にリリースされた『GUNDAM SONG COVERS』はオリコンウィークリー3位を獲得し、その年の「日本レコード大賞」企画賞を受賞。2020年にリリースされた続編『GUNDAM SONG COVERS 2』はオリコン&ビルボードウィークリー2位を獲得 。『GUNDAM SONG COVERS 3』はオリコン&ビルボードウィークリー3位を獲得 。シリーズ3作品全てにおいてオリコン週間ランキング3位以内にランクインという快挙を成し遂げ、進化した歌声が再注目された、本シリーズですが、今回は男性ボーカル曲だけをセレクトしたカバーアルバムとのことですが、こちらはどのようなコンセプトで決定したのでしょうか?

森口博子(以下、森口):シリーズ第2弾の「GUNDAM SONG COVERS 2」の収録曲は人気投票によって選ばれたものでしたが、結果として上位10曲が女性ボーカルの曲となりました。ただ、やはりガンダムシリーズといえば男性ボーカルの人気楽曲も数多くありますから。第3弾の「GUNDAM SONG COVERS 3」では男性ボーカル曲の中から、皆さんにリクエスト頂いていた曲や、ディレクターさんのおすすめや、私が挑戦してみたい曲を選ばせていただきました。

――ありがとうございます。その一方で、BONUS TRACKにはご自身のデビュー曲(「水の星へ愛をこめて」)を含む「Zガンダム」のメドレーが収録されております。森口さんによるカバーアルバムの大団円としてはこれ以上ないセレクトですよね。

森口:そうなんです! そもそもこの「GUNDAM SONG COVERS」シリーズの制作が始まったのは、NHKの「全ガンダム大投票」で、360曲以上ある関連楽曲の中から私のデビュー曲を1位に選んでいただいたことがきっかけだったんです。シリーズ第1弾の1曲目が「水の星へ愛をこめて」だったので、最終章である今作のボーナストラックも同じ曲で幕を閉じることで、私にとっての原点を感じていただけるような意味も込めて選びました。

――NHKの投票企画から参加されているファンの方も多いでしょうから、その感動もひとしおですね。

森口:涙腺爆発ポイントだと思います(笑)。このメドレーでコラボさせていただいた鮎川麻弥さんは、「機動戦士Ζ ガンダム」の前期オープニングテーマ(「Ζ・刻をこえて」)を歌われていて、私がデビュー曲で後期オープニングテーマを歌っていたので、麻弥さんとは私が17歳の頃から36年の付き合いなんです。ファンの方々にも、「色んなことを一緒に乗り越えてきたね」という歴史を感じていただけるようなトラックになっていると思います。

――コラボといえば、今回は前作・前々作に引き続き、さらに多くの魅力的なゲストアーティストの方々とコラボされています。

森口:そうなんですよ!「この方ともやりたいな、この方とも……」と考えていたら、いつの間にかほとんどの曲がコラボになってしまいました(笑)。

――第1弾から参加されている方々も多い一方で、オーイシマサヨシさんなど初参加の方々もいらっしゃいますね。

森口:オーイシさんは色んなことをしかける天才なんです! BS11のレギュラー番組「Anison Days」という番組でも何度もコラボさせていただいていたので、原曲(「STAND UP TO THE VICTORY ~トゥ・ザ・ヴィクトリー~」)を聴いて考えた時に「オーイシさんにピッタリだ」と思って依頼させていただきました。卓越したミュージシャンの方々による演奏、生命力に溢れたアレンジと、人の心を一気にハッピーにしてしまう歌声。想像以上の仕上がりになったので、気分が折れてる時に聴くと特効薬になってくれるアッパーな曲になっています!

――他にもたくさんのコラボ楽曲が収録されていますが、それぞれ印象的なお話がありましたらぜひ教えてください。

森口:なんといっても、まずはTM NETWORKの皆さんに参加していただいたことですね!第1弾でもこの曲(「BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を越えて~」)はカバーさせていただいたので、過去作でカバーした曲は今回は収録しない予定だったのですが、大人気のこの曲を収録しないのも寂しいな、と思ったんです。どうしようかと思った時に、TM NETWORKの皆さんに参加していただければ、ファンの皆さんにも興奮してもらえること間違いないと!。私の友人でもあるメンバーの木根尚登さんに連絡して相談したところ、小室哲哉さん、宇都宮隆皆さんにもご快諾いただけて!感激しました!!小室さんのリアレンジがとにかく美して心震えました。宇宙を感じられるような立体的で3D音楽のようなエッジがありつつも、私の声質に合ってやわらかいアレンジにもなっていて。TM NETWORKの皆さんのコーラスが入ったことで重厚感も増して、出来上がった音源を聴いた時に思わず涙がこぼれました。

――このアルバムでしか実現できないような、貴重なコラボレーションですね!

森口:あとは、SALT&SUGARのお2人とコラボさせていただいた「いくつもの愛をかさねて」。ピアノとボーカルのシンプルな同時レコーディングだったんですけど、これもハイレゾで聴いたらもう……!塩谷さんの透明感のあふれる繊細かつダイナミクスを感じるピアノの世界と、竹善さんの歌声……私は「人たらしボイス」と呼んでいるんですが(笑)。ワンフレーズ聴いただけで心を掴まれるようなボーカルで。私達のハーモニーは、ぜひこのアルバムの「うっとりポイント」として聴いていただきたいです。

――音数が少ない構成だからこそ、音質の良さが引き立って聴こえるトラックでしたね。アコースティックな楽曲でいえば、ジャズヴァイオリニストの寺井尚子さんとコラボさせていただいた「RIVER」も印象的でした。

森口:寺井さんは今までのGUNDAM SONG COVERSシリーズの全てに参加してくださっていて、いつも感動を裏切りません。原曲は米米CLUBの石井竜也さん作詞・作曲のグルーヴが独特の難しいオシャレなバラード楽曲なんですけど、尚子さんの歌心ある情熱的な演奏で、私のボーカルも感情が高ぶりました! 今回はオリジナルにはないイントロを付けていただきたくて「苦悩」というテーマをお伝えしたら、胸が締め付けられるドラマティックなヴァイオリンのイントロが素晴らしいアレンジが誕生しました。この楽曲も同時レコーディングで、尚子さんやメンバーの皆さんの演奏から私の息遣いまで全部が感じられる、本当に素晴らしいレコーディングになりました。

――ぜひハイレゾで堪能していただきたい仕上がりになっていますね。全シリーズに参加といえば、押尾コータローさんの「Gの閃光」のアレンジもさすがでした。

森口:押尾さんにも全作品に参加していただきました。もう、安心のギターですね。粒立ったキラキラのサウンドが本当にカッコよくて!エッジの効いたギターからパーカッシヴな音色まで、一人で何役も演奏しているような幅広い演奏が気持ち良いんです。

――音色のキャッチーでいうと、「ターンAターン」のアレンジも物凄い迫力ですね。

森口:和楽器バンドの神永大輔さんですね! 元々西城秀樹さんのオリジナルの楽曲にも和のテイストが少し入っていたので、そこを更にフィーチャリングしたくて。尺八で参加していただいたのはナイスなセレクションだったと思います。神永さんの尺八は本当にアグレッシヴな演奏で、こんな尺八は生まれて初めてでした。世界で大活躍されている理由がわかりましたね。管楽器のように自由自在で、ロックサウンドとも相性が良いんです。この演奏を聴いたら、皆さんの尺八の概念が変わると思います。

――ラストの10曲目を飾る「ビギニング」も壮大な仕上がりでした。

森口:前作から参加していただいているVOJAさんとのコラボで、この楽曲は、もう、とにかく……デトックス!(笑)細胞の隅々から湧き出るようなVOJAさんたちの歌声が本当に神々しくて。ミュージックビデオが私のYouTubeチャンネルで公開されているんですが、深海やオーロラの映像が出てきたりして、音と画の全てで堪能していただけると思います。最初はとつとつと静かな始まり方なんですけど、サビのところで壮大に盛り上がるコントラストが最高!「そして 時が すこやかに あたためる 愛」という歌詞が普遍的で、特に今の傷を負った地球に必要な歌だと実感しています。シリーズ最後のアルバムの10曲目で、フィナーレを飾るにふさわしい大楕円的な楽曲になっています!

――そして、もちろん本アルバムにはコラボ曲だけでなく、森口さんによる数々の素晴らしいカバーも収録されていますね。

森口:1曲目の「翔べ!ガンダム」は、誰でも知っている有名な勇ましい楽曲ですから、これをどうアレンジするかが課題でした。「大人のガンダムソング」というアルバムコンセプトを元に、私の頭の中で鳴っている管楽器やベースなどの音をスキャットでお伝えしたら、スタッフの皆さんに好評で。ジャズのビッグバンドスタイルにしたくて。トロンボーン奏者の西村健司さんに編曲していただいて、11人編成のビッグバンドによる豪華なアレンジとなりました。

――ブラスセクションならではの厚みがあって、1曲目から心を掴まれるような素晴らしいアレンジでした。

森口:イントロだけを聴くと、ガンダムソングだってわからないですよね。ジャズクラブに来たような、これから何が始まるんだろう、って感じ。狙いとしては、1曲目から「こう来たか!」と皆さんに感じてほしかったんです。私は日々エゴサするんですけど(笑)常に身に付けている、マスク・ブラジャー・エゴサは三種の神器で、発表されてからず、まさにSNSで「こう来たか!」とか「イイ意味で裏切られた」というファンの皆さんの興奮した反響たくさん届きました。ニンマリとガッツポーズです(笑)。MVもエンターテインメントしているので、是非チェックして欲しいです。

――狙い通りの反応がもらえたら嬉しいですよね(笑)。続いて、5曲目の「砂の十字架」についてはいかがでしょうか。

森口:原曲は、谷村新司さん作詞・作曲、やしきたかじんさんのオリジナルで、この時代ならではのセクシーさがあるというか。哀愁と色気のある大人のガンダムソングです。これもまた時乗浩一郎さんによるアレンジが素晴らしくて!イントロの低音を効かせたゴスペルテイストのコーラスからカッコイイんですよォ。どちらかというと私は高音のイメージがあると思うんですが、森口博子の新しい世界をお楽しみいただけると思います。

――ハイレゾだとボーカルの細かなニュアンスまで楽しめるので、注目して聴いていただきたいですね。

森口:そうですね! この楽曲は「ライリー」という、印象的なスキャットから始まるるんですが、スキャットって表現者としてすごく実力が問われるところなんです。歌詞がない、同じ言葉の繰り返しだからこそ、ボーカリストとしてどう表現するのか。後半「ルーララ」「ライララ」のスキャットが25小節も続くんです。ひとつひとつ表情が違いますので、ぜひ聴いて楽しんでいただきたいです!

――ありがとうございます。それでは、8曲目の「Meteor」についてもぜひご紹介ください。

森口:原曲はT.M.Revolutionさんの打ち込み主体のエッジが効いています!今回はストリングスを主体に柔らかく大きな世界にアレンジしましたので、ストリングスの鳴り方などに注目して聴いていただいても面白いと思います。

――原曲がまさにT.M.R! という感じのサウンドなので、その印象の違いに驚きました。

森口:浅倉大介さんによる、ロックなんだけど歌謡曲的なテイストもあるような、日本人の琴線に触れるメロディが素敵なので、そのメロディともすごくフィットしたアレンジになっています!

――たくさんのご紹介ありがとうございました! さて、この「GUNDAM SONG COVERS」シリーズは一般の音楽シーンのみならず、e-onkyoにて「GUNDAM SONG COVERS」がアルバムデイリーチャート1位&2019年の年間アルバムランキング10位を獲得、「GUNDAM SONG COVERS2」が3週連続でアルバムウィークリーランキング1位を獲得するなど、多くのオーディオ愛好家にも支持されています。そんな方々に、あえて1曲をオススメするならどちらの楽曲でしょうか?

森口:えー、どれだろう!(笑)どれも本当に素敵なんですが、1曲だけ選ぶなら、初登場でもあるオリジナルアーティスト、TM NETWORKの皆さんとのコラボ曲「BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を越えて~」ですね。ガンダムのコンセプトである「宇宙」を本当に強く感じられるので、ハイレゾで聴いていただければ、イントロからその世界観にいざなってもらえること間違いなしだと思います!

――ありがとうございます。それでは最後に、皆さんにメッセージをお願いいたします。

森口:スタッフの皆さんと愛をこめてトラックダウン、マスタリングと最後までこだわり抜いた作品です。「良い意味で往生際の悪いチームだ」ってお互いに言い合うくらいで、最終チェックとして聴いても、「OKです! ……“今のところ”」って付け足すんです(笑)。それから後でまた聴いて、もう一度手を加えていって。なので皆さんに是非、ハイレゾならではの聴覚が至福に包まれる細かい音の隅々まで体感してほしいですね!そして、ガンダムファンの皆さんはもちろん、初めましての方にも、ガンダムソングの魅力と私の歌声にぜひハイレゾで触れていただきたいです。たくさんエゴサしますから。感想も拡散希望でお願いします(笑)。

――皆さんの反応が楽しみですね(笑)。本日はありがとうございました!


宇宙の彼方で(「機動戦士ガンダム THE ORIGIN IV 運命の前夜」主題歌)森口博子

蒼い生命』/森口 博子


From e-onkyo music articles