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Qobuzで始めるオーディオライフ -デジタルソースの歴史

2007年にフランスで始まった高音質音楽配信プラットフォームQobuz(コバズ)が、10月24日にいよいよ日本でローンチした。Qobuzはすでに世界25カ国でストリーミング&ダウンロードサービスを展開しており、日本は26カ国目となる。ここではQobuzが扱っているデジタルソースについて、その歴史から紐解いてみよう。

待ちに待ったQobuzがついに日本で正式スタートした!月額1,280円から※で聴けるオーディオファン待望の定額制音楽ストリーミングサービスだ。音楽CDの規格である44.1kHz/16bit PCMを超える最大192kHz/24bitのクオリティで、数千万曲もの楽曲が聴き放題。そして数多くのストリーミングサービスを試している僕の視点から見ても、Qobuzは日本ですでにスタートしている他の同系サービスにはないアドバンテージがある。

ここではまず、デジタル音楽ソースの歴史を時系列で振り返りつつ、それぞれの長所、短所についておさらいしていこう。

まずは1980年代前半に登場したCD(コンパクトディスク)。私たちオーディオファイルが初めて手にしたデジタルオーディオのメディアだ。初の商用音楽CDが発売されたのは1982年。発売当時の価格は1タイトルあたり3,500〜3,800円くらいで、フォーマット/レゾリューションはPCMの44.1kHz/16bit。現在でも幅広く流通している。

続いて1999年に登場したSACD(スーパー・オーディオCD)は、CDの音質を超えるべくDSDフォーマットを採用したディスク・メディアである。解像度は2.8MHzで、アナログのような滑らかな質感を狙い、理論上だが録音周波数帯域が100kHzまで拡張した。なおSACDには、「SACDシングルレイヤーディスク」と「SACD/CDハイブリッドディスク」の2種類があり、SACD層の再生には専用のSACDプレーヤーが必要となる。タイトルの発売数は減ってきているものの、現時点においても高品位なオーディオ再生を目指す愛好家に支持されている。

そして次に登場したのが、ハイレゾを始めとするデジタル音楽ファイルだ。なお1998年ごろ(つまりSACD登場以前)には、すでにMP3と言われるロッシー(非可逆圧縮)のデジタル音楽ファイルが巷に登場していた。これは主に、ユーザーがPCを使ってCDからリッピングした楽曲を保存するデジタル・ファイルとして存在した。

そんな風に、CDからリッピングしたデジタル音楽ファイル再生の下地がある上で、CDの解像度を超えるハイレゾ音源が流行り出したのが2010年代前半。アーティストや音楽制作者しか聴けなかったスタジオ・マスター・クオリティの音源が、手元のオーディオ機器で聴けるとあり、一大ブームを起こした。

ハイレゾを含むデジタル音楽ファイルのメリットは、インターネット上のダウンロードサイトから手軽に入手可能なこと。そしてCDやSACDで必要なディスクを回転させるためのドライブメカを必要としないため、プレーヤーの大きさや形に制約がなくなったことなど多岐に渡る。しかし楽曲ファイルのバックアップやフォルダ管理、ファイルに内封される楽曲情報などのタグ管理といったPCを使う運用が必要となり、それに慣れず二の足を踏んだベテランオーディオ愛好家も少なくない。

そのような中で登場したのが、定額制音楽ストリーミング・サービス(サブスクリプション・サービスとも言われる)である。2008年にスウェーデンの企業スポティファイ・テクノロジーがサービスを開始した。その後、サーバー上にある楽曲をインターネット回線経由で再生するスタイルで、今や音楽再生ソースの主流となっている。

その最大の長所は、楽曲数の多さだ。月々数百円から数千円を払うことで、シングル・アルバム、プレイリスト(DJやライターが選んだオムニバス)単位で楽曲が聴き放題になり、ラインナップされている楽曲数は数千万曲を超える。

楽曲のクオリティはサービス会社によって異なり、CD以下のいわゆるロッシー音質、CDと同等のロスレス音質、そしてCDを大きく超える92kHz/24bitでのハイレゾ音質での配信を実現したサービスもある。

オーディオファンにとって、ハイレゾ音質でのストリーミングのアドバンテージは見逃せないポイントだ。たとえばボーカルの口元の動きやわずかな息遣いの違い、アコースティック楽器の質感がより生々しく、演奏の微妙なニュアンスさえ描き分ける。また、左右2本のスピーカーから表現されるサウンドステージの奥行きや楽器のレイヤー感などにも少なくない違いがある。ハイレゾで視聴できる楽曲は、アーティストや制作者がリスナーに聴かせたい音楽の世界観を余すことなく表現してくれる。

また、ストリーミングサービスは、最初に各サービスと契約を行い、機器のセッティングをしてしまえば、あとはスマホやタブレットをリモコンとして快適な操作でひたすら音楽と向き合えることも魅力と言える。ファイルの管理もいらず、CDを超える音質で数千万曲が聴き放題になる。



ただし、ストリーミングサービスはあくまでもサーバー上の音楽を再生する作法なので、ローカルに楽曲を所有することができない(スマホやパソコンなどではダウンロード機能を利用できるサービスもあるが、あくまでも契約中しか再生できない)。また、特定の音楽サービスを使用したいと思ったら、それに対応しているオーディオ製品を用意する必要があることもある。

私の見立てでは、上述の長所が短所に比べて魅力的なこともあり、ストリーミングサービスはオーディオソース(広義に言えば巷の音楽再生スタイル)の最終形になる可能性が高い。

さて、そのストリーミングサービスだが、すでに世界中に数百以上存在し、日本でもかなりの数がある。その中でどのサービスを選べば良いのか? 僕は数多くのストリーミングサービスと契約しているが、オーディオファンならではの選択のコツがあるのも事実だ。例えば以下の通りになる。

1. 自身が使う(購入予定の)オーディオ機器がサービスに対応しているか?

2. 音質を大きく左右する、楽曲の最大レゾリューション(ロッシーまたはCD以下、ロスレス・CD同等、ハイレゾまたはCD以上)は?

3. 日本で正式にサービスをスタートしているのか?

4. 楽曲数や得意な楽曲ジャンル、また、配信ラインナップは充実しているか?

5. 気に入った曲を見つけた時に進める次のステップ(楽曲の購入機能)が用意されているか?

6. 月額料金 …etc

実のところQobuzは、オーディオとの親和性を強く意識するオーディオフレンドリーなストリーミングサービスだ。次回は、Qobuzが持つ優位性を具体的にお伝えしたい。


注 ※サブスクリプションプランは、1年分(12カ月分)一括払い(返金不可)で¥15,360~(月額換算¥1,280~)。月毎にお支払いされる場合は¥1,480/月~。