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ベストポータブルミュージックプレーヤーを選ぶ

ポータブルミュージックプレーヤーのことを考えた時にまず頭に浮かぶのは、愛用のヘッドフォンをつけてお気に入りの曲をあれこれ聴きながら表通りを歩く自分の姿だ。DACにも、ヘッドフォンアンプにも、自宅のハイファイシステムにもヘッドフォンはつなげるが、外出する時に最も一般的なのは、スマートフォンをオーディオプレーヤーとして使うことだろう。しかし、音にうるさい人だったらこの方法には満足できず、リスニング専用のデバイスが欲しくなるはずだ。スマートフォンというのは、やはりまずは電話なのだ。家から出た時でも最高の音質で音楽を楽しみたいのなら、ここはやはりポータブルミュージックプレーヤーの出番だろう。ウォークマンの後には、あらゆる予算に適う数えきれないほど多くのモデルが続いている。私たちのアドバイスをもとに、自分にピッタリの機種を見つけてほしい。

※この記事はQobuz海外版からの翻訳です。日本の状況とは異なる場合がありますのでご了承ください。

ポータブルミュージックプレーヤー

40年以上前、シンプルなヘッドフォンがついた電池駆動のカセットプレーヤーが世に出た。ウォークマンである。今日、このカセットプレーヤーは完全に消えてしまったが、その復活を望む声は今も絶えることがない。しかし時代は完全に変わった。メモリーカードに何千もの曲を入れて、さらに簡単に動き回れるようになったのだ。磁気テープの限界ある性能とFLACやDSDファイルの限界知らずの解像度との音質の差が計り知れないものであることは論を俟たない。

ポータブルミュージックプレーヤーはもはや、動くメカではなくなった。主要な機能は、音楽のデジタル信号を読み取ってアナログに変換してヘッドフォン出力に送ることになったのだ。機能の差については言うまでもないし、価格だって5,000円程度からと非常にお手頃になっている。とは言え、より洗練されたミュージックプレーヤーは、エントリーモデルとは3つの点で異なっている。

その1:音楽ファイルの処理能力が高く、望むことのできる最高の音質での再生が可能。

その2:ストレージの容量が、あなたのライブラリーをそのまま収められるほど大きい。

その3:どんなヘッドフォンでも正しく駆動できる出力を備えている。

デジタルミュージックプレーヤーと同じ機能をスマートフォンも持っているのだから、代用品としては十分に思えるかもしれない。ヘッドフォンがつなげない場合もあるのでその部分を我慢すれば、の話だが(ケーブルのないヘッドフォンで高音質が楽しめるというのはちょっと想像できない)。それにスマートフォンでも、SDカードリーダーを使えばストレージの能力も同等になる。しかし話がオーディオプロセッシングに及ぶと、これは比べようがない。今手に入れられる最高の音質を生むように設計されたスマートフォンはない。ハイエンドのD/Aコンバーターもないし、音楽専用のエンドツーエンドのオーディオストリームプロセッシングなど望むべくもない。スマートフォンはミュージックプレーヤーではない。この2つは全く別ものだ。

先進的なオーディオプロセッシング

多くのポータブルミュージックプレーヤーには、その品質に見合うだけの部品が組み込まれている。特に重要なのがコンバーター(DAC)だ。最高のポータブルミュージックプレーヤーには、家庭用オーディオ機器と同じチップが使われている。最高のサウンドを楽しめるプレーヤーを見つけるためには、ここが重要だ。オーディー信号経路上のその他のパーツももちろん重要で、最も先進的なポータブルミュージックプレーヤーのメーカーは、最高の供給元から入手した部品を使うのが常だ。信号を確実に統一するために、あまりない選択(真空管やFPGAチップなど)をするメーカーもあるが、多くは変換用チップを増やすものだ。DSP(デジタルシグナルプロセッサー)を使えば、イコライザーを操作して好みに合う音質にしたり、多様な環境下で音楽を再生したりできる。そしてこのような部品が、幅広いオーディオファイルの再生も保証してくれる。ハイレゾが当たり前のように思われることも多いが、これにはMQAやDSDを含めたほぼ全てのサンプリングレートやフォーマットをカバーする必要がある。

音楽ライブラリーを収める大規模ストレージ

ほぼ全てのポータブルミュージックプレーヤーが、内部に数百メガバイトのストレージを持っている。256MBや512MBがあれば、CDクオリティのトラック数千曲を、どこにでも持って行くことができる(数千と書いたが、ストレージが512 MBの場合で約15,000曲になる)。だがハイレゾファイルが増えてくると、この容量では足りなくなってしまう。ポータブルミュージックプレーヤーの中にはSDカードのスロットがあり、2つ設けてある機種もある。モデルによっては(買う前に確認が必要)、1~2TBのカードを使えるものもある。これがあればプレーヤーの容量が何倍にも増えて、自分のライブラリーをそのままどこにでも持って行けるようになる。いつもポケットに何枚かのSDカード、というのも音楽のコレクションが増え続けるような人にはいいやり方だ。

ヘッドフォンに適した出力

ポータブルミュージックプレーヤーに重要な機能の一つが、ケーブル付きのヘッドフォンに適切な出力を送れることだ。言うのは簡単だが、世に出回っているヘッドフォンの種類の多さと、それがどれも全く異なるキャラクターを持っていることを考えれば、これは一筋縄でいくことではない。そのキャラクターでも最も重要なのが、インピーダンスだ。インピーダンスが高ければ高いほど、より高いパワーを供給する必要がある。ちゃんと出力(mW単位で表示される)をチェックして、良い組み合わせを見つけよう。もう一つ重要なのが、コネクターだ。ヘッドフォン用のコネクターで、ポータブルミュージックプレーヤーに多く用いられているのは、2.5 mm、3.5 mm、4.4 mmの3種類のミニジャックだ。3.5 mmジャックが最も一般的で、これは従来型のステレオのアンバランス端子に対応している。その他の2種類はバランス型で、左右のチャンネルが完全に独立していることで、より高音質が得られるようになっている。お目当てのポータブルミュージックプレーヤーがあったら、手持ちのヘッドフォンのジャックに対応しているかどうかを事前に確認しておくことは欠かせない。

どのポータブルミュージックプレーヤーを選ぶべきか?

ポータブルミュージックプレーヤーを選ぶ時に考えるべき3つの選択基準である、オーディオプロセッシングとストレージ、ヘッドフォン出力について見てきた。この必須条件を押さえれば、新しいデバイスを選ぶ時に自分のニーズと自分が持っているヘッドフォンのタイプに合わない機種を簡単に除外できる。もちろん予算は重要な要素だが、その他の要素も選択の参考になる。

インターフェース

相当数のポータブルミュージックプレーヤーが、タッチスクリーンにAndroidを使っていて、操作がスマートフォンに似たものになっている。スクリーンの下側にはアイコンで表示されるメニューがあり、設定はスクリーンの上部で指をスライドさせるとアクセスできる、等々。メーカーはオーバーレイを追加することでインターフェースをロックしてオーディオのプレイバック機能専用にしている。このオーバーレイが複雑なものもあり、特にプレーヤーに追加機能が多くついているものはその傾向がある。よりシンプルな操作のインターフェースを持つモデルがいいかもしれない。

Wi-Fi

ミュージックプレーヤーは、ネット接続のためのWi-Fiを装備している。Wi-Fiのおかげでコンピュータからプレーヤーに転送した曲の管理がやりやすくなる。またWi-Fiによって、Qobuzなどのストリーミングサービスをスマートフォンに似た形のアプリとして追加することができる。ミュージックプレーヤーはWi-Fiを通じて内部のストレージをシェアしたり、他の機器のオーディオサーバーとして使ったりすることもできる。このような追加機能は、色々なシチュエーションにおける使い勝手で最大化することを目的として加えられている。

Bluetooth

Bluetoothは、ポータブルミュージックプレーヤーに広く使われている。音質の面では推薦し難いところもあるが、Bluetoothデバイスとワイヤレスヘッドフォンを組み合わせることも可能だ。大半のミュージックプレーヤーは、aptX HDやLDACといったBluetooth Hi-Resコーデックを搭載している。これによって、理屈の上ではケーブル付きのヘッドフォンには劣るとしても、転送のクオリティが最大化される。またBluetoothは小型のワイヤレススピーカーに音楽を転送することもでき、個人でのリスニングとスピーカー再生という2つの機能をポータブルミュージックプレーヤーに持たせている。

バッテリーの寿命

バッテリーの寿命も、忘れてはならない条件だ。ポータブルミュージックプレーヤーはモバイル機器なので、必ずバッテリー駆動を必要とする。どのバッテリーも同じとはいかないので、それぞれのミュージックプレーヤーのバッテリー寿命が大きく異なることもある。もちろん、バッテリーは機器の中で非常に大きい面積を占めているので、バッテリーの寿命が一番長いデバイスを選ぼうとすると、一番大きいものになりがちではある。ハイレゾのファイルを再生すると、CDクオリティのファイルを再生する時よりもはるかに早くバッテリーがなくなることも忘れないようにしたい。

サイズ

最後に、これも重要なことだが、ミュージックプレーヤーのサイズと重量も考えるようにしたい。ご存知だろうが、バッテリーが大きいと、その分本体も重くなる。メーカーの中にはミュージックプレーヤーを特殊なデザインや厚みのある素材を採用している場合もあって、簡単にはポケットに収まってくれない大きさになっていたりもする。その他にも、人間工学にしたがってスクリーンを可能な限り大きくして、その分プレーヤーの物理的なサイズも大きくなっているものもある。庭先のデッキチェアの脇にミュージックプレーヤーを置きたいのであれば、サイズや重量もそこまで問題にはならないだろう。しかし通勤の時に持って行きたいとか、プレーヤーを持って散歩に行きたいとか考えているなら、このような要素はかなり重要になる。