新ボーカリスト、エミリー・アームストロングを迎えたリンキン・パークとして初のアルバム『From Zero』は、これまで以上に注目を集めている。2017年、ボーカルのチェスター・ベニントンが、親友クリス・コーネルの死後数カ月の内に亡くなるという悲劇が、グループの運命を決定づけたかのように思われていた。だが、実際にはその後の状況は曖昧なままだった。ある者は「グループは解散する」と語り、またある者は「まだ可能性はある」と曖昧な態度を取っていた。その裏には、リンキン・パークという「金の卵を産むガチョウ」を簡単に手放すわけにはいかないというマネジメント側の思惑があったのかもしれない。なぜなら、リンキン・パークはそのキャリアを通じて、疑念や批判を受けながらも、確固たる成功を収めてきたグループだからだ。
リンキン・パークのデビューアルバム『Hybrid Theory』(2000年)の成功は絶大だった。当時、ニュー・メタルは衰退し、ラップとメタルの融合も過去のものとなり、ポスト・グランジの波も停滞していた。そんな音楽業界の混沌の中、リンキン・パークはさまざまな影響を巧みに取り入れつつ、ポップにメインストリームの要素を加えた独自のスタイルを確立し、幅広いリスナーを獲得することに成功した。その結果、当時の専門メディアからは「計算された商業プロジェクト」と批判されることもあったが、その成功は疑いようがなかった。そして、その楽曲は20年以上の時を経てもなお色褪せることなく、リンキン・パークの音楽的な実力を証明し続けている。グループの出発点は、高校時代の友人たちが始めたバンドであり、マイク・シノダがその中心人物だった。その後、ベニントンが加入したことでバンドの方向性が大きく変わったが、結成自体は彼が参加する数年前にさかのぼる。
リンキン・パークは、『Hybrid Theory』『Meteora』『Minutes to Midnight』の3枚のアルバムで、約10年間にわたりメタルとロックのメインストリームを席巻。その後のアルバムは、前作ほどの評価を得られなかったものの、2017年までライブ活動を続け、ファンとのつながりを保ち続けた。そして、7年間の沈黙、再発盤やライブアルバムのリリースを経た今、グループは驚くべき新たなスタートを切った。
その中心にいるのが新ボーカリストのエミリー・アームストロングだ。彼女の過去(現在も関与している可能性のあるサイエントロジー教会や、強姦罪で有罪判決を受けた俳優ダニー・マスターソンとのつながり)をめぐり、批判の的となったこともあった。しかし、彼女はリリースされたシングル曲やライブ・パフォーマンスを通じて、実力を証明してきた。
懐疑的な声や批判、チェスター・ベニントンの家族などからの意見、一部のメンバーの不在など、解決すべき問題はまだ残っている。しかし、多くのファンはすでにこの新しい体制を受け入れている。その証拠に、2024年11月3日にパリ・ラ・デファンス・アレナで行われたコンサートのチケット4万枚は数分で完売。会場でのパフォーマンスも、グループがまだ健在であることを示した。この復活劇は、2024年の音楽業界における最大の出来事の一つとして記憶されるだろう。