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ACTIVOというブランド名を知っている人は、古参のポータブルオーディオマニアだけかもしれない。しかしながらAstell&Kern(アステル&ケルン)という名前だったら多くの音楽好きが知っていることだろう。ACTIVO(アクティヴォ)は、Astell&Kernが展開したカジュアル(ジュニア?)ブランドで、より多くの人にハイレゾ対応DAP(デジタルオーディオプレーヤー)を楽しんでほしいという意図のもとに展開されたもの。ファーストモデル「CT10」は軽量コンパクトなボディーサイズや手頃な価格設定から注目を集め、当時はセガサターンやビックカメラなどとのコラボモデルも登場した。しかし、「CT10」以降は新モデルがラインアップされることなく、このまま消え去ってしまうブランドなのか……と思っていた矢先に誕生したのがこの「ACTIVO P1」だ。
P1の概要
端的にいえば、「ACTIVO P1」は音楽再生に特化したAndroidデバイスだ。SIMカード・スロットはないがWi-Fi&Bluetoothワイヤレスを搭載、音声通話も想定されていないのでスマートフォンというよりもタブレットに近い存在かもしれない。また、USB DAC機能も持ち合わせ、スマートフォンと有線(USB)接続することで格別のサウンドを楽しむこともできる。さらに、BluetoothはaptX™ HDやLDACなどのコーデックにも対応しているため、ワイヤレスでも良質なサウンドを楽しむことができる。DAPといえば、音質最優先のため機能的にはかなり限定されるイメージがあるかもしれないが、この「ACTIVO P1」は意外と多機能で、シチュエーションに合わせたさまざまな使い方ができるようになっている。
また、サードパーティー製アプリにも対応可能なAndroid OSを搭載しているので、QobuzをはじめApple musicやAmazon musicなどのストリーミング配信アプリや、使い慣れた音楽再生アプリを利用することも可能。画面サイズは4.1インチと小さいもののYouTube動画だって楽しめる。Wi-Fiを巧みに利用したり、スマートフォンと接続させるなど通信環境さえ確保すれば、あらゆる場所で活用できる。
とはいえ、ハイレゾDAP製品だけに本来の役割である音質に関しては、かなり充実した内容を持ち合わせている。たとえば、音質の要のひとつであるDAC(デジタルアナログコンバーター=デジタル音源をアナログ音声に変換する部分)には、ESS製「ES9219Q」を2基搭載。デュアルDAC構成とし、さらにLR独立回路やバランスヘッドホン出力を採用することで、音質面でのクオリティーアップを実現している。また、AKM社製サンプルレートコンバーター「AK4137EQ」も搭載されており、こちらを利用することでさらなる音質アップも可能となっている。さらに、スピーカーに近い音像を実現するクロスフィード機能も搭載されていて、こちらも(ユーザーによっては)重宝することだろう。
P1の操作性
ユーザビリティに関しては、かなりの良質さを持ち合わせている。そもそもAndroid OSを搭載し、(独自画面にカスタマイズされているとはいえ)使い勝手に迷わない操作性を確保してくれているので、Androidスマートフォンユーザーであれば、説明書不要で使いこなすことができる。Octa-core CPUなので動作ももたつかず、ミドルクラスAndroidスマートフォンとそう変わらない快適さで活用できる。
少々難儀だったのが検索画面などでの日本語入力だ。上下フリックに対応していないようなので、ローマ字入力のほうがやりやすかった。細かい部分でいくつか気になるところはあったが、総じて扱い安い製品といえる。
P1の試聴
肝心の音質を確認するべく、Qobuzアプリをダウンロードして試聴をおこなってみた。イヤホンは水月雨「Kadenz」を使用、4.4mmバランス出力端子に接続している。
いつもの宇多田ヒカル『BADモード」は、実体感のあるリアルサウンドが楽しめた。ほんのわずかに声がハスキーで、低域が普段よりもややジェントルかも?な音色傾向となっているが、ハイレゾ音源ならではの音数の多さ、声のリアルさがはっきりと感じ取られるのはうれしいかぎり。男性ボーカル、たとえば藤井風の歌声もニュートラル、という言葉がピッタリの自然さで、彼の歌声の魅力を存分に堪能できる。
続いて洋楽ポップ、ビリー・アイリッシュ『バッド・ガイ」を聴いてみた。距離感の近いソリッドな音が、たたきつけてくるかのような勢いで楽しめる。非ハイレゾ版を聴き慣れている人はぜひ試聴してみてほしい。この臨場感につい夢中になってしまうはず。
念のため、聴き慣れたニルヴァーナでも試聴する。カート・コバーンの歌声が普段よりもややハスキーなものの、サウンドのパワフルさはしっかりと伝わってくる。ハードロック系との相性も悪くない。
最後にこれまでとは対極といえるジャンル、クラシックのオーケストラも聴いてみた。楽器のひとつひとつがしっかりと届いてくるし、音色も自然。広がり感もよく、ハイレゾならではのメリハリのよさとも相まって、臨場感あふれる演奏を堪能できた。
最後に
音楽はちょっと音質がよくなる(情報量が増えたりノイズ感が抑えられたりする)だけで途端に雄弁になり、その世界にグイグイと引き込まれていく。ハイレゾ音源ならではの楽しさを、「ACTIVO P1」はしっかりと伝えてきてくれるのだ。もちろん上には上があり、(姉ブランド)Astell&Kernのフラッグシップモデル「A&ultima SP3000」ではライブ会場にいるかと錯覚するほどのリアリティーを持ち合わせているが、扱いやすさ、操作性のよさ、そして何よりもコストパフォーマンスの高さで「ACTIVO P1」は大いに魅力的。スマートフォン+TWS(完全ワイヤレスイヤホン)とは格別のサウンドを、皆さんも体験してみてはいかがだろうか。